まずは神経の炎症を抑える!

鍼治療の目的は、第一に神経の炎症を抑えることです神経の炎症が治まると、痛みはなくなります。「椎間板ヘルニアとは?」で説頸椎ヘルニアの治療小さい.jpg明したとおり、症状のある人、症状のない人、無作為に選んでMRI撮影を行った結果、症状のない人でも椎間板の脱出が認められる人が多くいることが分かっています。

また、飛び出した椎間板周りの血液循環が良くなってくると、椎間板の飛び出した部分が吸収されて来ることもあります。

ただし、麻痺症状の見られる場合、痛みが非常に強い場合には、専門医の診察・治療を勧める場合があります。


                           頸椎椎間板ヘルニアの治療

原因となる神経レベルを求める

 

腰椎MRI小.jpg

腰椎椎間板ヘルニア画像

椎間板ヘルニアの治療で大事なことは、原因となっている椎間板のレベル(高さ)を探すことです患者さんの訴える症状を丁寧に聞き取り、痛み・痺れの範囲、知覚鈍麻の場所、SLRテストスパーリングテスト腱反射の確認等で、腫れている神経を探し出します。特に、問診は診察の中で一番大切なものです。問診をないがしろにしては、ちゃんとした治療方針は立ちません。問診によりおおよその原因を推察し、それを各検査で確認していくわけです。われわれ鍼灸師レントゲンMRI等の機器はありませんが、先に述べた方法でほぼ9割方、原因追及することが出来ます。あとの1割は、専門医に検査等をお願いしています。

 

右図ではL1−2(第1腰椎と第2腰椎の間)に軽度の椎間板の脱出が見られます。髄核の白い部分はなくなっていることが分かります。椎骨の間も狭いです。L5−S1(第5腰椎と仙骨との間)の椎間板には変性がみられ、間が狭くなっています。

もう一点大事なのは、本当に椎間板ヘルニアが痛みの原因なのかと言うことです。と言うのは、患者さんが訴える部位にある筋の凝り、これはトリガーポイントと一致することも多いのですが、この部分の凝りに鍼灸していくと、痛みが和らいでいくことをよく経験しているからです。この場合、たとえMRI画像で椎間板ヘルニアが認められても、ヘルニアは痛みの原因ではありません。

治療の実際

仙腸関節2

仙腸関節調整刺鍼

人間の身体の土台は骨盤です。骨盤は仙骨・尾骨・腸骨・恥骨、坐骨で構成されています。

特に重要なのは仙骨と腸骨で構成される仙腸関節です。仙腸関節 は、医学的には強く固い靱帯で繋がっているので動きはないと言うことになっています。

しかし、私の永年経験では、腰痛の症状のある方は、この仙腸関節 動きが固くなっています。また、左右でズレも見られます。

歩く・走るなど人間の 基本となる動きには、捻れが入ります。仙腸関節が固いと上手く捻られませんから、背骨や臀部の筋肉や関節に余分な負担がかかります。

 

腰椎椎間板ヘルニアや腰痛症、その他腰部脊柱疾患では、この仙腸関節調整刺鍼が基本になります。

仙腸関節調整刺鍼では、仙腸関節の動きを良くするようにをします。仙腸関節の緊張が取れると、各椎骨のつまりも取れて、神経の刺激が弱まります。症状によっては治療直後から、効果が実感できます。

また腰の筋肉の緊張バランスも取れ、筋肉性の腰痛でも大変効果があります。

椎間関節

椎間関節周囲刺鍼

椎間関節周囲に鍼をして神経炎症を抑えます。

また、この部分まで鍼先を到達しなくても、表面の脊柱起立筋多裂筋に刺鍼することで同じ効果を期待できます。

置鍼し低周波鍼通電を行うことで神経根ブロックと同じ効果をえることができます。

椎間板ヘルニアだけでなく、椎間関節性腰痛症(ギックリ腰)でも使われます。

 

老化した筋を柔らかく(掃骨鍼法)

腰痛はじめとして首肩の凝り・五十肩など慢性的な痛みにはある特徴があります。それは、痛みを出している発信源のところは、凄く粘っこく硬くなった筋肉の繊維が存在すると言うことです。それは筋腹(筋肉の膨らんだところ)ではなく、骨に付着する場所にあります。多分、そう言う場所は筋肉を使う時に一番無理のかかっている所なんでしょうね。また、冷えがあって血流が悪く新陳代謝(老廃物の排出)が落ちている場所でもあるんです。水飴を更に煮詰めて佃煮になった状態を想像してみて下さい。凄く粘着力があってかき混ぜるのに凄く力がかかりますよね。柔軟性はなくなり石かと誤解するぐらい。特に第4腰椎・第5腰椎・仙骨の辺りはそんな感じです。

掃骨鍼法は、そのような佃煮状になった筋を柔軟にする刺鍼法です。

ところで、掃骨鍼法とはいったいどんな治療法なのでしょうか?掃骨鍼法は、小山曲泉先生(こやま きょくせん、1912年〜1994年)が創始した鍼施術法です。少し太めの鍼を使い、老廃物で硬くなった筋肉付着部に錆を落とすが如く鍼をしていく治療法です。

 

註) 腰椎椎間板ヘルニア・頚椎椎間板ヘルニアにおいても、神経根周囲の筋肉が、このような硬い筋肉組織に変化している場合が多いです。このような状態を放置しておいては神経根の腫れ(炎症)が、改善されるには時間がかかってしまいます。

 

但し、この鍼法は刺激量が若干強く、誰にでも受け入れて頂ける治療法ではありません。治療後、ダルミや筋肉痛が出ることがあります。痛みを持つ方の8割はオーソドックスな軽い刺激で痛みが和らぎますが、残りの2割の方は軽刺激では楽になりません。掃骨鍼法をトライしてみる価値はあります。

治療開始は早めに!

頸椎・腰椎椎間板ヘルニアの鍼灸治療は、早く開始するのがお勧めです!神経と言うのは、炎症が長く続くと、たとえ炎症がなくなっても働きが元に戻らなくなります。痛みは取れたが、痺れが残るというのはこれです。出来るだけ早く治療開始することをお勧めします。また、長く痛みが続くと、脳への痛み伝達回路に誤作動が起き 痛みが取れにくくなります。1ヶ月以内の治療がお勧めです。半年以上経過した場合は症状の取れる確率はかなり低くなります。


 

  • Kさんの場合(腰椎椎間板ヘルニア)

約1年前にクシャミをしたことがきっかけで、左腰からお尻、左下肢(大腿後側〜下腿外側・甲部)に痛みが出現。発症直後は痛みで歩行も困難であった。

整形外科を受診し腰椎椎間板ヘルニアと診断され、鎮痛剤(飲み薬と座薬)を処方された。仕事は行ったり、行かなかったり。どうにか2ヶ月後ぐらいから強い痛みは和らいだ。しかし、腰を少し曲げたり、デスクワークが続くと、お尻〜下肢痛み・痺れが出てくる。

発症1年後、来院。症状・経過等から第5腰神経のヘルニアと判断。神経の炎症抑制のため、腰部・臀部の神経走行上に取穴し鍼治療開始。2ヶ月後痛みは和らぎ、無理しなければ感じなくなったが、下腿外側〜甲部〜拇指にかけての痺れは若干和らいだ程度。その後も再発予防のため、月に1〜2回受診している。1年経った現在も痺れは残っている。

 

 

  • Hさんの場合(頸椎椎間板ヘルニア)

1週間前に、きっかけなく、朝起きると寝違えたような痛みが首にあり、じっとしていると背中(肩甲骨あたり)・腕も痛む。人差し指・中指に強い痺れがある。

3日後に整形外科を受診しMRI撮影にてC6・C7の2ヶ所にヘルニアが見られる。上腕三頭筋(上腕の後側)の筋力も低下しているようである。デスクワークが多く、じっとしていると背中・腕が痛く、ちょくちょく手を振っている。日中はまだ我慢できるが、仰向いて寝ると背中が痛く、ここ4〜5日あまり寝ていない

ナチュラルスパーリングテスト陽性知覚鈍麻・疼痛エリアから判断すると、MRI診断の通り、C6・C7が責任レベルである。

C6・C7神経根(神経の出口)周囲の循環改善・首肩背中の筋緊張緩和を目的に鍼灸治療を開始。治療直後から、腕・背中の痛みがかなり和らいだようである。しかし、明日は症状が元に戻ることを説明し、暫く治療を継続していただく。翌日はやはり痛みが戻っている。治療する→痛みが軽くなる→翌日痛みが戻る→治療する→痛みが軽くなる このパターンが暫く続くことを納得していただく。

4日後、久しぶりで朝まで知らずに寝ていた。1週間後、症状が戻る日と軽い日とある。2週間後、首を上に向けなければ痛みはない。日中は痺れ以外ほとんど気にならない。連日の治療を1日置きにする。1ヶ月後、痛みは殆ど気にならない。夜もよく眠れる。指の痺れは意識する日と、しない日がある。約1ヶ月半、痺れもなくなり、治療を中止する。椎間板の脱出はあるので、定期的に予防に治療することをお願いして、終了とする。

 

  • Aさんの場合(腰椎椎間板ヘルニア)

忘年会の翌日、寝て起きる右側のお尻からと足が痛く、立ち上がるのもやっとであった。前日の飲み会で胡座を長時間かいていたのが原因ではないかと思う。足の指(拇指)の痺れも強かった。

2日目(月曜日)、当院受診。ベッドに上がるのもやっとである。SLR35°お尻から下肢(大腿・下腿)の裏側に痛みが走る。また、痺れも強くなる。仰向けに寝たままで拇指の筋力を見ると背屈(指を上に上げる)が明らかに弱くなっている。

L5レベルの椎間板ヘルニアと判断し、神経根炎症抑制と筋緊張を緩和目的に、腰部(第4・第5腰椎傍側)と臀部の圧痛の強い場所にをする。治療後、あまり変化無し。本人には、まずは安静の大事さと、治療効果が出るには暫くかかることを説明した。本人も納得し、年内は仕事を休むことに決定。

歩行がつらいので、杖を貸し出す。もう暫くするとちょうど正月休みに入るので、3週間は休める。正月明け、痛みも以前からみると和らぎ、半日は仕事に行くようになった。無理は禁物であることを説明する。4週間後、痺れは残るものの、痛みは以前ほどではない。冬で気温が低いためか、日によっては痛みが強いこともある。7週間後、痛みはほぼ消失。SLR陰性拇指筋力も正常に戻る。痺れは弱いものの残っている。2ヶ月後、痺れも殆ど感じられない。再発予防のための治療継続を勧めて、一応終了とする。

 

 

  • Dさんの場合(左臀部・大腿部〜下腿の痛み)

年末より徐々に臀部から太腿後側・下腿外側に痛みが出始めた。整形外科を受診しレントゲン撮影を行ったが特に異常は見られなかった。年末年始の休みをまたぎ痛みが徐々に強くなってきた。立っていることや歩くことでも痛みを感じ、最近は車の運転等で座っていても痛む。鎮痛剤・湿布薬で様子を見ていたが変化がない。発症より1ヶ月後に当院に受診。SLRは(右−、左−)、痺れや知覚異常も見られない。立って後に体を反らせると臀部〜下肢に痛みが出てくる。最近は寝ていても痛む。腰痛はこれまでない。

 

腰部を診察すると背骨の直ぐ横の脊柱起立筋に強い筋緊張と圧痛が見られる。ハッキリとした腰椎椎間板ヘルニアの所見はみられないが、軽度の椎間板ヘルニアはあるのかもしれない。神経の出口周辺の血液循環改善と筋緊張緩和を目的に脊柱傍側刺鍼と仙骨刺鍼を行う。Dさんには症状の改善が見られるまで半月ほどかかること告げた。暫くは2日1回の施術を行った。その後徐々に痛み痺れの出る頻度が少なくなり、1ヶ月後には150mほど歩けるようになってきた。1ヶ月半後には殆ど症状が無くなり一応治療は終了。

 

  • Tさんの場合(右臀部・大腿部〜下腿・足の痛み)

2ヶ月前に立ち上がろうとして腰を傷めた。1週間ほど安静に努め痛みは和らいだが、その10日後、物を持った際に腰に痛みが走り、その夕方から右臀部から大腿・下腿外側・足の甲に痛みが出てきた。翌日は立って暫くすると臀部から下肢に痛みが出てきて、直ぐ座らなければならない。整形外科を受診するとMRI撮影によりL4−5の腰椎椎間板ヘルニアと診断された。痛み止めを服用しているが、痛みで仕事に支障がある。整骨院に2週間通うが治りそうな感じがしない。以前鍼治療を受けたことを思い出し受診した。接客業であり立ち仕事をしなければならないが、とても辛い。ベッドに寝てSLRテストを行うと30度にて臀部から下腿に痛みと痺れが出てくる。咳で痛みも感ずる。側臥位にて脊柱脊柱傍側に刺鍼しパルス通電を15分行う。臀部の圧痛点と症状の出る部位に単刺(鍼を刺入後、直ぐ抜く)を行う。下腿外側にも単刺する。伏臥位にて脊柱傍側刺鍼と仙骨刺鍼を行う。直後、症状が若干楽になるが、帰宅後は症状が戻る感じである。2週間は一日置きに施術を行う。徐々にではあるが、痛みが和らいでいる。1ヶ月後、痛みはあるものの、仕事中ちょくちょく座ることは無くなってきた。下肢の痛みは楽になってきたが、腰痛の方が強く感ずるようになってきた。SLRテストでは40度にて痛みが下肢に出てくる。その後も週に2回の頻度で治療を行い、約2ヶ月後には殆ど症状は無くなった。現在は腰の鈍痛があるため、不定期に受診している。

 


 

 


椎間板ヘルニアの治療には安静が大事!

椎間板ヘルニアの治療には、安静がとても大事です。いくらベストな治療を選択しても、安静にしていなければ、症状の改善は望めません。症状の強弱・仕事内容によっては、休職をお願いすることがあります。特に腰椎椎間板ヘルニアでは、起きていることが椎間板に負担をかけます。更に腰を曲げた仕事や重い物を持つことは、飛び出した椎間板が更に飛び出して、症状が強くなることもあります。

 

もし仕事上、安静が保てない場合、入院をお勧めいたします。入院すれば仕事を気にすることなく、安静を保って治療に専念出来ます。

 

※なお、頸椎椎間板ヘルニアでは、休職までする必要のない症例が多いです。結果、頸椎椎間板ヘルニアの治癒率は高いです。

まとめ(このような状態には手術をお勧めいたします)

このような場合では鍼灸での改善は難しいです。手術にはタイミングがあり、その時期を逃すと神経の戻りが悪くなり後遺症が残る場合があります。脊椎専門の整形外科医・脳神経外科医の受診をお勧めします。

 

腰椎椎間板ヘルニア

  • 足の親指を上に上げることが出来ない
  • 踵立ちが出来ない
  • オシッコや大便が出ない
  • 痛みが強い状態が長く続いている(安静にしていても痛い)
  • 痛みが半年以上続いている

 

頚椎椎間板ヘルニア

  • 箸を持つ、ボタンを留めるなど、指の細かい動きがしにくい
  • 階段の上り下りなどがしにくい
  • 痛みが強い状態が長くつづいてる
  • 痛みが半年以上続いている
▲このページのトップに戻る