椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッションの役目をする椎間板が飛び出したことです。
それに伴って背骨から出た神経が炎症を起こし、手・足に痺れ・痛みが起こります。
しかし、誤解してはいけません。必ずしもヘルニアがあるからと言って症状が出るわけではないのです。
症状のない人でもMRIの画像を見ると圧迫があることが、よくあります。
なぜそう言うことが起こるかと言いますと、神経を栄養している血管の血流が悪くなって、初めて神経の炎症が起こるのです。
つまり、神経の炎症さえなければ痛みや痺れはないのです。
もちろん、椎間板の飛び出しがあると、痛み・痺れが起こる確率が高いのは事実です。
椎間板ヘルニアには、頸椎に起こるものと、腰椎に起こるものとあります。
頸椎に起これば肩・腕・手に痺れ・痛みが起こります。
腰椎に起これば腰・臀・足に痺れ痛みが起こります。
仰向けに寝て症状のある方の足を誰かに持ち上げて貰います。このとき膝は伸ばし足首は90°に曲げて貰います。椎間板ヘルニアが原因の場合、右上の写真ぐらいでお尻から膝裏を通って足まで痛み・痺れが出ます。
椎間板ヘルニアが原因でない場合、右下の写真ぐらい足を上げても、痛み・痺れが出ません。これをSLRテスト(またはラセーグテスト)と言います。 そして症状が出た場合、陽性と言います。
陰性の場合、椎間板ヘルニアではない、別の原因があります。例えば高齢者では、脊柱管狭窄症であったり、変形性腰椎症、若い方では、疲労による腰筋・臀筋の緊張、筋肉内に出来たトリガーポイントも足の痺れや痛みの原因となります。
一般には痺れというと正座後の痺れのようなジンジンとした感覚を言いますが、ヘルニアでは、そのジンジンする感覚とともに、知覚鈍麻が起こります。
知覚鈍麻とは触った感じが鈍くなることです。ヘルニアの診断には、この知覚鈍麻が重要になります。知覚鈍麻の部位によってヘルニアの位置・神経炎を起こしている神経の高さが分かります。この神経の高さとMRIの画像が一致して、椎間板ヘルニアと診断できるのです。
腰椎椎間板ヘルニアでは、足全体の感覚が鈍くなることは、あまりありません。足の親指側か足の中指側か足の小指側、と言うふうに、ある程度ハッキリと境があります。
右図は知覚エリアを示しています。Lは腰神経、Sは仙骨神経です。数字は神経の高さです。
例えばL1は第1腰神経を示しています。腰椎椎間板ヘルニアでは、L4〜S1が侵されることが殆どです。L4が侵された場合、下腿の内側から内踝(うちくるぶし)にかけて、L5が侵された場合、下腿の外側から足の甲の中心から親指にかけて、S1が侵された場合、踵から小指側にかけて感覚が鈍くなります。
椎間板ヘルニア以外が原因で足が痺れることもあります。バージャー病やASO(閉塞性動脈硬化症)と言って、末梢の動脈が詰まったり細くなって痺れます。日常生活では症状が出ませんが、少し長道を歩くと出て来ます。また、足根管症候群(モルトン病)でも足が痺れます。どちらも上に示した知覚エリアを無視した痺れ方(足先全体が痺れるとか、足全体が痺れる)になります。
腰椎椎間板ヘルニアでは筋力の低下が起こることが多いです。神経が腫れると神経の働きもおかしくなり、力が入らないのです。
踵立ちできない場合や、できても左右差がある場合、L5神経(第5腰神経)が侵されていることが考えられます。
つま先立ち出来ない場合や、できても左右差がある場合、S1神経(第1仙骨神経)が侵されていることが考えられます。この場合、注意しなければいけないのは、痛みで出来ないのではなく、力が入らなくて出来ないと言うことです。
上で示したSLRテスト、知覚鈍麻、筋力低下の結果から、原因となっている椎間板のヘルニア位置を判断いたします。
腰椎椎間板ヘルニアは若い年齢層に多い病気です。
20歳代で約35%、30歳代で約27%、40歳代で約20%、60歳代では1~2%だと言われています。20~40歳代で起こる坐骨神経痛では椎間板ヘルニアを第1に疑うべきです。
椎間板ヘルニアが原因となっている場合、咳・クシャミでお尻・足に痛みと痺れが走ります。咳・クシャミは椎間板に大きな圧力をかけます。それにより神経を刺激して症状がでるようです。
なお、 ポイント3 で示した筋力低下が著しい場合(全く踵やつま先が上がらない)、筋力低下が長く続いている場合には、専門医をご紹介いたします。鍼灸での対応が難しく、手術が必要となるケースと思われます。
頸椎椎間板ヘルニアには2つのタイプがあります。一つは神経根圧迫型、もう一つは脊髄圧迫型です。鍼灸治療が適応となるのは神経根圧迫型です。
脊髄圧迫型は早急に手術の必要があります。神経根圧迫型は頚・肩・腕の痛みと痺れ(シビレ)だけですが、脊髄圧迫型では、手が思うように動かない、上手く歩けないと言った運動系の障害も出て来ます。
ナチュラルスパーリングテストとは、首を痛みのある方向に向け、首を後に反らせた時に、痛み・痺れが強くなるかを見ます。
この姿勢では首から出る神経(頚神経)の出口が狭くなり、炎症を起こし腫れている神経を刺激し易くなります。この状態で痛み・痺れが強くなる場合、陽性とします。陽性では明らかに首に痛み・痺れの原因があることが判断できます。
頸椎椎間板ヘルニアでも、腕・手にジンジンする感覚とともに、知覚鈍麻が起こります。
知覚鈍麻とは触った感じが鈍くなることです。頸椎椎間板ヘルニアの診断にも、この知覚鈍麻が重要になります。知覚鈍麻の部位によってヘルニアの位置・神経炎を起こしている神経の高さが分かります。
この神経の高さとMRIの画像が一致して、椎間板ヘルニアと診断できるのです。 神経根圧迫型では、手全体の感覚が鈍くなることはありません。
第5頚神経(C5)が侵された場合、上腕の外側に知覚鈍麻が出て来ます。第6頚神経(C6)では親指に、第7頚神経(C7)では人差しと中指に、第8頚神経では掌の小指側に知覚鈍麻が出て来ます。
神経根圧迫型でも若干は低下することはありますが、脊髄圧迫型では著しく低下します。10kg以下になることも珍しくありません。
脊髄圧迫型が必ずしも鍼灸で改善が見られないと言うことはないのですが、一度専門医にご紹介し詳細な検査を行ったうえで、鍼灸治療で対応すべきか、手術をすべきか判断していただきます。
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